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日銀券が食われる日

金融庁が急いで規制に乗り出そうとする背景には深刻な危機感があると私はみている。つまり、JR東日本やドコモのような巨大企業が電子マネーを発行することで、それがいつのまにか企業通貨(疑似通貨)として一般にも広く流通しかねない、という懸念をもっているのではないかということだ。スイカはチャージによって、すでに巨額の資金を滞留させているという。JR東日本がそれをどのように活用しているかは不明であるが、その膨大なキャッシュフローで投資や貸出しを始めたなら、これは銀行に近いものである。

さらに、ポイントが次々に現金に換金される風潮が一層広まれば、これも脅威である。日本の通貨制度が根底から崩れることになる。実際、日銀券の発行(マネーサプライ=通貨供給量)がここ二~三年、減少に向かっており(とくに五十円以下の小額貨幣が著しい)、それが電子マネーの急速な普及が原因といわれる。日銀が発表した二〇〇七年の資金供給残高(マネタリーベース、平均残高)は前年に比べて七・八%減の八十八兆六千三百五億円となった。マイナスは二年連続している。

さらに、ポイントも交換によって、現金に換えられるものが増えるなど、疑似通貨的な位置づけになっている。このまま野放しにしていると、国家の根幹である「信用創造」を侵す事態にもなりかねないと電子マネーだけでなく、ポイントも含めた包括的な規制を急ごうとしているのだ。オーストリア生まれの経済学者フリードリヒ・ハイエクが「紙幣や貨幣を造幣するのはもはや国家の専業事業ではなく、貨幣鋳造を民営化すべし」と主張したことがあったが、そんな主張が電子マネー、ポイント問題をきっかけにまことしやかに叫ばれでもしたら大変なことになる。

そう思って規制を急いでいるのかもしれない。以上のように考えると、これから成立する規制法は、電子マネーとポイント事業者にとっては、かなり厳しいものになりそうだ。サーバー管理型電子マネーにも供託金を義務づけるのはもちろんだが、金融庁の息のかかった業界団体をつくり、そこが金融庁の代わりに取り締まりを実施する。いつでも立入検査のできる体制をつくり、ルールに違反したら最大一億円の罰金を科する。いかがわしい業者を締め出すために資本金を引き上げ、最低五千万円以上とするなど厳しい内容になるだろう(同様の規制は「貸金業法改正」で実施済みであるからだいたいの想像はつく)。こうしたことをあわせて考えると、現在の電子マネー、ポイントのブームは近いうちに急ブレーキがかかる可能性が高い。

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