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デビットカードを潰した前科

クレジットカード陣営は以前に、今回と同じく、ライバルとなりそうなデビットカードを潰した経験があった。デビットカードというのは、キャッシュカードを使って買い物のできる決済サービスのことだ。クレジットカードが中額・高額の買い物が中心なのに対して、デビットカードは少額の支払いに向く。また、クレジットカードと違い、支払いは直接利用者の銀行口座から引き落としになるため、借金にならず、しかも利用額を把握しやすいというメリットがある。ただ、これは基本的に銀行の金融商品である。

クレジットカードと違って銀行口座を作れば無審査で提供してもらえるため、信用力の低い人でも手軽に作れる。このため、欧米では、低所得者や移民を中心にデビットカードの利用が増えている。いまではクレジットカードの取扱高を上回るほどになっている。そうした背景があって九八年に郵貯と富士銀行(現みずほ銀行)は、「日本デビットカード推進協議会」を設立して、九九年にJデビットという名称でサービスを開始した。

その際、加盟店開拓などの実務をカード会社に委託しようとした。Jデビットは、インフラづくりをNTTデータに依頼していたが、同社は加盟店開拓や会員募集などのノウハウをもっていなかったので、関係の深い複数のカード会社に委託した。カード会社は、共にキャッシュレス化を進めるパートナーとして協力を約束した。銀行も関わっていることであるし、積極的に協力する姿勢をみせた。しかし、それは表向きにすぎなかった。というのも、カード会社にとって、このビジネスは全くといっていいほど魅力がなかったからだ。デビットカードは銀行の商品であったからだ。

①デビットカードの手数料はクレジットカードより低かった(クレジットカードが三%ならデビットカードは一%ほど)。加盟店手数料は銀行に入り、カード会社には入ってこない。さらに仲介手数料はもっと少ないからメリッ卜はない。

②デビットカードは銀行の商品であって、カード会社は関係ない。どこにも絡むことができないやっかいな商品なのだ(メガバンクの傘下に入った現在は多少事情は変わっているが)。

③自分らのライバルになるかもしれない商品をいくら銀行から頼まれたからといって育てる気はなかった。それはどのお人好しではなかった。

カード会社はJデビットに協力する振りをしながら、自らを守るために積極的な営業をしなかった。そして、結果的にはJデビットは潰れはしないが、塩漬けのような状態になった。すでに十年の実績があるというのに、使っている人をそれほどみたことがない。また、現在の加盟店が三十万店というのもクレジットカードに比べるとはるかに少ない。クレジットカードの場合、VISAブランドだけで世界に二千四百万店もあったりするのに。大げさにいえば、クレジットカード陣営によって、Jデビットは、「骨抜きにされた」といってもよい状況である。こうした「実績(?)」かおるから今回の電子マネーに対しても、いざとなったらこの手を使おうと、クレジットカード陣営は手ぐすねを引いているのである。